「そんなのずるい」





「ズルイ。ずるいよ、トランクス君」


悟天は俺を上目遣いでじっと睨んでいた。ベッドの上から。

ここは俺の部屋なのに、ベッドはすっかり悟天が占領している。

それも別に珍しい事じゃないので、全く気にしていないが。

しかし今の言葉は聞き捨てならなかった。何故ならその言葉は唐突に出たものだったから。


「何だよイキナリ。俺、何かしたか?」


くるっと振り返り、剥れている悟天を見る。

柔らかそうで可愛い頬をこれでもかという程膨らませて怒りを表している。

可愛い。物凄く可愛い。くそう、襲いたくなってきた。

そんな俺の心の葛藤を知る事も無く悟天はまだ拗ねている。




「…だってさ、トランクス君、今年卒業じゃん、中学校」


仕方ないだろ、俺もう中3なんだから。中4は無いんだよ、悟天。

中3だから、今こうやって受験勉強をしているというわけで。




「でも来年はお前だって卒業するんだぜ?たった1年じゃないか」


「ヤダ。1年なんて長すぎる。僕も一緒に卒業するーっ!!!飛び級するーっ!!!」


最後にはジタバタ暴れ始めた。

こいつ、ガキっぽいよなぁ。いや、可愛くて好きなんだけど。

それにしても俺は驚いた。悟天が『飛び級』なんて言葉を知ってた事に。

こいつの癇癪は何時もの事だからとりあえず驚く事はない。


「…ただでさえ進級危ない奴が飛び級なんか出来るわけないだろ」


「うーん…。ほら、それはこう…実力行使で?」


そう言って悟天はかめはめ破の構えのマネをする。

止めろ、笑い話で済まなくなるから。


「なんだよ悟天。学校通うの嫌になったのか?」


もし苛められてたりするんだったら俺がそいつら取っちめてやる。

俺の可愛い悟天を苛めるなんて…、命知らずもいいところだ。

しかし悟天の反応はNOだった。


「苛め?僕が?男女共に人気者のこの僕が?あるわけないじゃん」


確かに悟天は男女関係無く人気が高い。昔から。

だから俺がヤキモキするってことが多かったんだけど。

じゃあ苛めじゃないなら一体なんだ、悟天がこんなに拗ねてる理由は。


「んー…全然思いあたらねぇ。なんでそんなに拗ねてんだよ、お前」


「だーかーらー。先刻言ったそのままだよ。卒業しちゃうからっ!」


それだけ言うとまたぷーんといった感じに剥れる。可愛い(いい加減にしろ)


「…もしかして、俺が卒業しちゃうから、寂しい…とか?」


それだったらかなり嬉しい。凄く嬉しい。

このまま重力室に行ってお父さんにかめはめ破をかませるくらい…それは止めとこう…。

しかし悟天の反応は俺の予想を軽く裏切った。


「んなわけないじゃん。何時でも会いに来れるんだから。僕が『ズルイ』っていうのは、一人だけ新しいところに行くのなんてズルイって言ってんの。僕も通ってみたいっ!高校!!」


…なんだよ、期待させやがって。

ようは本当に子どもの癇癪だったってわけだ。

例えば俺が新しいおもちゃを買って、同じものを欲しがるように。

俺は心の底から落胆した。くそー、何で俺だけこんなにこいつの事好きなんだよ。







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何なんだ、この話は。でも私の中の悟天ってこんな感じ。
そんでもって悟天にメタ惚れなトランクスが好き。逆でもいいけどね(なんじゃそりゃ)