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1.何でこんなヤツなんかに
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ほら、こんなに気になる。
何でこんなヤツなんかに。
毎日毎日、振り回されなければならないのだろう。
何でこんなヤツなんかに。
あの、被験者(オリジナル)と複製者(レプリカ)の運命を決める戦いの後。
何故か、アイツは私達の目の前に姿を現した。
死んだ筈の彼は、死ぬ直前までのあの空虚な雰囲気はなく。
ただ目の前に姿を現した。
私が、「なんで、私達の前に現れたの?」って聞いたら。
「僕を生き延びさせた馬鹿が、行けっていったから」とわけの判らない答えを返した。
結局彼は、私と、フローリアンと一緒にダアトで暮らしている。
「あーもう、掃除手伝ってくれないならせめてどいてよっ!!!」
「……嫌だね」
ぷっつん。
いくら温厚(?)なアニスちゃんだって、いい加減切れるぞゴルァ。
久しぶりの休み。
ローレライ教団の建て直しが激しく忙しくて、毎日目が回りそう。
だから自分達の生活空間の掃除も細かいところまでは行き届かなくて、だから今やってるのに。
「優しいアニスちゃんが、もう一度だけ言うよ〜……。手伝う気がないならさっさとど・い・て!馬鹿シンクっ!!」
「……断る」
ああ、今この手に持ってるホウキを思いっきり手折ってやりたい……(でももったいないから出来ない)
只今寝室掃除中。
シンクはそこでのんべんだらりと寛いでいた。
本人曰く、
「普段興味も無い教団の建て直しなんかの手助けしてやってるんだから、休みの日くらいキチンと休ませてよね」
だそうだ。
確かにシンクには教団を建て直す理由が無い。
どっちかっていうと、憎んでるのかもしれない。
だけど、文句も言わないで、私を助けてくれている。
それはとっても助かってるし、絶対に言わないけど、嬉しい。
でも。
「それとこれとは別っ!!だから掃除まで手伝わせてないでしょ!!」
「ボクは今ここで休んでるんでね。……他掃除してきたら?」
お互い引かず。
ムカつくなら一緒に居なければいい。
それは、簡単。
だけど。
そんな折、パタパタとコチラに駆けて来る音がする。
「アニスー!!あっちの窓拭き、終わったよー!!!」
満面の笑顔で走ってくる少年。
目の前の怠惰男と同じ顔の筈なのに全然違ってみえる。
ある意味究極の癒し。
「フローリアン!わぁ、よく頑張ったね!!!」
「えへへへvvアニスに褒められたくて、頑張ったんだぁvv」
「うんうんvvフローリアンはいい子vvいっぱい褒めてあげるvvv」
今までの不毛な戦いがたった一つの笑顔で癒されていく。
目の前のシンクがどんどん不機嫌になっていくのにも気がつかない。
気に入らない。
アイツと同じ顔で、アイツと同じ笑顔を向けられる奴。
ボクと同じ物の筈なのに、決してボクとは同じ扱いを受けない奴ら。
ボクはアニスにあんな笑顔をされた事なんて無い。
なのにアイツらは何時でもいとも簡単にソレを手に入れる。
もう何もかもが気に入らない。
何時までここで馬鹿みたいに頭を撫でているつもり?
目の前から消し去りたいけど、消えそうにも無い。
だからといって、今ここでこの場を離れるのは何か負けた感じで癪に障る。
「シンクー、少しはフローリアンを見習えば〜?」
そんな馬鹿見習って何になるっていうんだよ。
褒められる為って、結局報酬目当て。
それの何処が偉いっていうんだ?
「いいよ、アニス。僕がシンクの分も働くから!アニスも少し休んでいいんだよ?毎日忙しいんだもん、少しはお休みしよ?」
たったそれだけの言葉なのに、アニスはジーンと感動してる。
馬鹿じゃない?そんな言葉が欲しいわけ?
そのくらいだったボクだって思ってる……言わないけど。
それに、普段働いてないフローリアンが家の手伝いくらいするのは当たり前。
なのに。
「フローリアン、ありがとうv」
そういってアニスはフローリアンの頬にキスを落とす。
それはハッキリ言えば母親が子供にする親愛のソレなんだが。
フローリアンが顔を真っ赤にした事と、胸のモヤモヤがそう理解するのを邪魔する。
ああ、もうどうして。
何でこんなヤツなんかに。
こんなにも気を取られなければならないんだろう。
何でこんなヤツなんかに。
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とある休日の話。
フローリアンはアニスになでなでされる為だけにお手伝いしてます。
シンクはまるっきり休日のお父さん状態。
だけど嫁が息子ばかり可愛がるのが気に入らない。
しかも息子は嫁の元彼にソックリ!(自分もだろうが)
そんな感じ。
どこの昼ドラだ、どこの。
2006.2.20
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