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1.遠い約束
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俺、お前に賭けたんだから。そして俺はそれに勝ったんだ








「あー、今日もマジ疲れたー!」

ぼふん、と大きなベッドにルークはダイブする。
今日の仕事は久しぶりにガイと2人での仕事だった。
このなんでも屋稼業を始めて早1年とちょっと。
大分仕事にも慣れてきた二人は、増えていく依頼を効率よくこなす為、最近では個人行動が殆どだった。
だが、今回の依頼は凶暴化した魔物退治だったので、二人でたった今こなしてきたのだ。

「ははは、にしてもお前、随分この仕事に慣れてきたんだなぁ」

「ばっか。だから俺だってなんでも屋の一従業員なんだからなー」

そういうルークも、数年前まではこんな風な生活になるとは考えもしなかった。
あの頃はただ毎日邸で寝て、食べて、剣の修行して、また寝る。
それの繰り返しだった。

「判ってるって。だからお前を信頼して仕事を任せてるんだろ?」

一人前扱いしてくれる親友が嬉しい。
一緒に毎日を過ごせるのが凄く幸せ。
こんな幸せでいいものなのかも考えものだが。











それはガイにしても同じだった。
寝っ転がっているルークをベッドに座らせる。
そしてまだキチンと乾いていないルークの髪をタオルで拭いてやる。
シェリダンで一番大きいベッドを買ったので、大の男2人でも余裕で座れる。
だから逆に、一人で寝る時はそれなりに寂しいものがあるのだが。

「にしても、今日はよく動いたよなー。まぁ飯まで貰えたのはラッキーだったけど」

そうやって笑うルークを見れるようになったのは1年前から。
それまでは帰ってくるかも判らずに。
信じてる、だが不安が消えてなくなる事は無かった。

「なぁガイ。今度暇になったらさ、たまにはバチカルやグランコクマやダアトまで行こうぜ!皆の顔見に、アルビオールでさ!」

こんな風に、日々を過ごせるなんて、思えなかった。
笑う事も、泣く事も、怒る事すら失った空白の2年。
それを埋めたのは、ルークと過ごしたあっという間の1年。

「この前母上から手紙来てたんだよなー。しかもアッシュから一言『顔見せろ』とか書いてあるし。アイツ性格丸くなったよなー」

もし、あの時あの賭けをしなかったら。
きっと自分はまだあの復讐という名の闇の中にいたのだろう。
光差すこの世界に居られる。
そこへ連れてきてくれたのは。


「……ガイ?さっきから黙ってどうしたんだよ?」

不思議そうにルークが俺を見つめた。
コイツだ。コイツのお陰だ。判ってる。
俺が、今、ここに居られるのは目の前のコイツのお陰だ。

「何か変な事言ったか?俺」

不思議そうにから徐々に不安そうになるルーク。
コイツが悪いわけでもないのに心配させるわけにもいかない。
俺は苦笑して、そのままを答えた。

「いや何、昔、あの賭けをしてよかったなぁとシミジミ思ってたところだよ」

遠い日に、自分自身とした約束。
それが叶うまで大分時間が掛かったけど。
賭けに勝ったのだ、自分は。

「賭けって……、あの、俺に剣を捧げるって、アレか?」

「あぁ。あの時あの賭けを自分自身にしてなきゃ、今の俺は存在しないからな。感謝してるぜ、ルーク」

言った後、感謝の意を込めて手の甲に口を落とす。
するとルークは恥しさで真っ赤になる。
そこが何というか、可愛い。

「なななななっ!!!何言ってんだよ、ガイっ!!!お……俺こそお前に感謝してるんだからなっ!」

相変わらずアッサリ気障な事をするガイから逃げるように離れ、だが目だけはガイを見つめルークが言った。

「最後の戦いの時に、『消えるな、帰って来い』って言ってくれただろ。それに俺が瘴気を消そうって決めた時も、『そんなの放っておけ』って。 俺、すんげぇ嬉しかった。ガイが、俺の帰ってくる場所だって思った。だから、戻って来れたんだ。ガイのお陰で」

真剣な顔をしながら、ガイの真正面に正座する。
それがどうにも世間一般で言う『新婚初夜』といった感じで思わず笑いを噴出してしまった。

「なっ!!!俺は本気でお前に礼をだなぁ……」

「判ってる判ってるって。……じゃあ、これでおあいこだな」

ぎゅっとルークの手を握る。
最初こそ笑われて拗ねていたが、そのうちルークも同じく手を握り返した。

「さ、そろそろ寝るぞ。明日も仕事が入ってるからな」

「へーへー。……生きるって大変だけど、すっごく楽しいよなっ!」

「あぁ……本当に、そうだな……」

礼なんていいんだ。お前がそこに居てさえくれれば。











遠い日の約束


約束は果たされた


これから進むのは


きっと光り輝く2人の道













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捏造EDガイルー編始まり始まり〜。
1はどれもちょっと説明調になりますね。
仕方ないです、まりんの中で勝手に作られたお話なんですから!
ここで少し説明をば。
設定でも書いたように、ルークもアッシュも帰ってきました。
んで、ルークは両親の元を離れ(母上を説得するのにはなかなか時間を要した)、シェリダンでガイと一緒になんでも屋を開業。
遠いところでの任務の時はノエルの力(というかアルビオール)を借りつつ、日々奮起中。
そんな中の1ページみたいな感じです。
最初はどれも平和に戻った世界の中の生活ーってのを書きたくて。
ガイはマルクト貴族としてどうしたんだ?というのはシカトしてください。
多分ルークと楽しい生き方をしたくて、自ら捨ててきたんだと思います。
何か2人共もう貴族は勘弁って感じだから。
因みに2人暮らしで、ベッドは大きく、一緒に寝てます。うふv



2006.2.21